事故物件を購入。後日それを知ってしまったら?不動産屋の説明義務

事故物件を購入してしまった事を後日知ってしまったら?

事件・事故が起こった物件を心理的瑕疵物件とか、事故物件と言いますが、個人情報の関係もあって、昨今では中々正そういった情報が入ってきにくいご時世です。

事故物件である事を購入後知ってしまったらどうすれば良いのでしょう?

誰が悪いのでしょうか?

不動産業者はどこまで責任を持たなければいけないのでしょうか?

解約や解除、損害賠償は可能なのでしょうか?

どれくらい前の事ならば許されるのでしょうか?

これらは凄く難しい部分があります。

今回は実際にあった裁判事例をご紹介し、それに基づいて判断基準を見ていきたいと思います。


紛争の内容

紛争の概要
  1. A1、A2は夫婦であり、2人の娘(売買契約当時小学生)と共に生活していた。

    Aらは平成20年12月1日、本件土地の所有者であったBとの間で、本件土地についてAらを買主とする売買契約を締結し、平成21年1月30日には代金決済が完了するとともに、A1、A2の共有とするBからの所有権移転登記がなされた。

    売買契約は宅地建物取引業者であるC株式会社の仲介によるものであり、、売買契約締結や代金決済等の手続きはC社担当のCの立会いの下行われた。

    なおAらは本件土地に一戸建てのマイホームを建築する目的で購入している。


  2. Dは本件土地のかつての所有者であり、本件土地上に建物を所有し、娘や内妻と居住していた。

    昭和61年1月、Dの内妻が実の息子に殺害されて遺棄されると言う事件が起こり、昭和63年3月には、Dの娘が前記建物内にて自殺すると言う事があった。

    前記建物は平成元年に取り壊されて、本件土地も売却され、その後本件土地は建物が建築されないまま転々譲渡されていた。

  3. 売主BはE(法人)から本件土地を購入しているが、Eは平成13年から平成14年にかけて、当時の所有者であったFから本件土地を購入しており、これをBへ転売している。

  4. この一連の売買はCが代表者を同一人とする関連会社Eを使用して行ったものである。

  5. 前記殺人事件は、新聞報道等もされ、社会的耳目を引いたものである。

    また、本件売買の決済前、Cの従業員が本件土地の近くで不動産業を営む者から、本件土地が「訳アリ」である事を聞き、自殺等に関係する物件である事を確認した事実が認められる。
  6. Aらは、Cに後記の説明義務違反があるとして、損害賠償の請求をなした。



  • 昭和61年・1 Dの内妻が実の息子に殺害される(本件土地とは関係ない場所で)

  • 昭和63年・3 Dの娘が本件土地上の建物内で自殺

  • 平成元年 同建物土地壊し

  • 平成元年以降 本件土地転々譲渡

  • 平成13年~平成14年 Eが土地を購入、Bに転売

  • 平成20年 本件売買



各当事者の言い分

買主Aらの言い分
  • 本件土地が自殺等にかかる物件である事は、小学生の娘二人を抱え、家族で暮らす居住用建物を建築するために購入したAらが、本件土地を取得するか否かの判断に重要な影響を及ぼす事柄である。

  • Cは本件土地に関して、関連会社Eをして転売に関与したり、その時の取得価格が近隣の価格等に比して低廉であること等の事情から、本件土地が自殺等にかかる物件である事を知っていた。

  • Cは宅地建物取引業者であるから、買主に対しその判断に影響を及ぼすべき事実について説明すべき義務を負うにも関わらず、本件土地が自殺等にかかる物件である事を告げておらず、説明義務に反する。

  • 仮に、売買契約時に、本件土地が自殺等にかかる物件である事を知らなかったとしても、宅地建物取引業者であるCは、本件土地がいわゆる事故物件であるか否かを調査すべき義務がある。

  • Cは売買契約締結時に、本件土地が自殺等にかかる物件であった事を知らなかったとしても、遅くとも、代金決済の数日前には、本件土地が自殺等にかかる物件である事をにんしきしており、Aらに説明すべきであった。

  • Aらは、Cのこれら説明義務違反により売買代金総額、仲介手数料等その他から、本件土地の時価額を差し引いた合計1800万円余の損害を受けており、CはAらに賠償すべきである。



宅建業者Cの言い分
  • 殺人の事実は、本件土地とは無関係の場所で起こった事件であり、本件土地との関連性はない。

  • 自殺の事実は、本件売買の20年以上前の出来事であり、しかも、本件建物は平成元年に取り壊され、心理的嫌悪の対象となる空間は無くなっている。
    通常、一般人が居住用不動産として相応しくないと感じる事に合理性はない。

  • 本件売買契約締結時、本件土地が自殺等にかかる物件である事を知らなかったし、代金決済時にも知らなかった。
    また、事故物件であるか否かの調査義務もない。


A夫婦
自殺があった物件だと知っていたら当然買わなかったわ!

不動産屋の調査不足、プロなんだから説明してくれて当たり前でしょ!

それに自分の所の会社で売買やってきているんだから、知ってたはずよ!?

どう責任とってくれるの!ちゃんと責任とりなさい!


というのが、買主であるAさんの主張です。

方や、不動産屋の言い分は・・・

不動産屋C
殺人事件は他所であった事だから、まあ関係ない話ですわ。

ウチも昔自殺していたなんて、全然知らなかったし、調べる義務は無いからね。

それに建物もはるか昔に壊してて、それを嫌がること自体おかしいのでは?

20年以上前の事だし、気にする方がおかしいですよ!


少し極端ですが、こんな感じですね。

以外と皆さんのそばにも結構あるお話で、自身の不動産についても確認してみるとイイでしょう。

実際に、事故物件を誤魔化して売買している案件をいくつか目にしたことがありますので、他人ごとではないですよ!?

このトラブルの争点と結末


本事例の問題点・checkpoint
  • この事例の様な自殺の事実は、本件土地を取得するか否かの判断に重要な影響を及ぼす事例であるかどうか?

  • また、20年以上も前の出来事であっても同様であるか?

  • 媒介業者はこの様な事実を知っていたとして説明義務を負うか?

  • 知らなかったとしても調査義務を負うか?


ポイントとしては、これらをどう判断するか、どう定められているかですね。

本事例の結末
  • Aらによる本件土地取得目的が、一戸建てマイホームを建築し、家族の永続的な生活の場にすることにあったとの事情に照らせば、本件土地上であったとの事実は、本件土地を取得するか否かの判断に重要な影響を及ぼす事実であった。

  • 宅地建物取引業者は、売買の仲介に当たり、当事者の判断に重要な影響を及ぼす事実については説明義務を負う。また、説明義務を果たす前提として、一定の範囲内で調査義務を負うが、対象物件上で自殺があったというのは、極めてまれな事態でもあり、事故物件であることを存在を疑うべき事情があれば、独自に調査をしてその調査結果を説明すべき義務を負うものの、そうでない場合には独自に調査をすべき義務までは負うものではない。

  • Cが売買契約締結時、本件土地上で自殺があった事を知っていたとは認められない。また、Cにおいて、事故物件性を疑うべき事情があったとは認めがたいが、Cの担当者が、遅くとも、代金決済の数日前には、同業者と話す中で、訳アリ物件であるかもしれないとの疑いを抱き、そこで確認をして代金決済前には20年以上前に本件土地上の建物内で自殺事件があったらしいとの認識にいたたと認められる。

  • これら事実は、売買契約の効力を解除等によって争うか否かの判断に重要な影響を及ぼす事実であり、Cは決済前に説明すべき義務があった。

    Cは説明義務違反と相当因果関係にある慰謝料等合計170万円について、Aらに対して賠償義務を負う。


と判断されました。

Aら及びC双方とも控訴したが、控訴審は双方の控訴を棄却して第1審判決を維持し、その中で、

裁判官
マイホーム建築目的で土地取得を希望する者が、本件建物内での自殺が近隣住民の記憶に残っている状況下において、他の物件があるにもかかわらずあえて本件土地を選択して取得を希望する事は考えにくい以上・・・・過去の自殺があったとの事実を認識していた場合には、これを説明する義務を負うものというべきである


と判示した。

事故物件であることを存在を疑うべき事情が無い場合は、調査義務は不動産業者には無い ⇒ 説明義務はない

事故物件であることを存在を疑うべき事情が有る場合は、調査義務は不動産業者には有る ⇒ 説明義務がある

というのが基本ですが、今回の事例では、

物件内での自殺事件は、取得するか否かの判断に重要な影響を及ぼす事実・・・近隣住民の記憶に残っている状況下

重要な影響を及ぼす事実を代金決済前に知ったと見なされるため、調査義務・説明義務がある

と判断されたと考えられます。

前述のポイントの答えとしては、
本事例の問題点・checkpoint
  • この事例の様な自殺の事実は、本件土地を取得するか否かの判断に重要な影響を及ぼす事例であるかどうか?

  • 重要な事例である

  • また、20年以上も前の出来事であっても同様であるか?

  • 年数は関係なく、近隣住民の記憶に残っている状況下であれば同様とみなされる。

  • 媒介業者はこの様な事実を知っていたとして説明義務を負うか?

  • 当然説明義務を負う

  • 知らなかったとしても調査義務を負うか?

  • 事件があった事を疑うべき事象があれば調査義務があるが、無い場合は調査義務は無い


という判断だ。

しかしこの、取得するか否かの判断に重要な影響を及ぼす事実というのが重要で、

事故物件かどうか?

心理的瑕疵は存在するか?

というのは、当然取得するか否かの判断に重要な影響を及ぼす事実に該当すると思われます。

という事はやはり、実務的にはできる範囲で調査はしておく必要があり、売主による告知も当然必要になってくるという事で判断されれば良いと思います。

今回の事例で言うと、不動産業者Cは、もし自殺事件があった事を知る由もない状況であれば、調査義務・説明義務は無かったかもしれませんが、

買主Aが、事故案件が取得するか否かの判断に重要な影響を及ぼす事実である ⇒ 事故物件はイヤ!

という状況が告知などであるのであれば、調査義務・説明義務が発生する訳なので、やはりできる範囲で調査はしておくべきであると言うのが答えでしょう。

出来る範囲の事はしたうえで、極力落ち度が無い状況を作っておく事が、不動産業者が取っておく行動である事が理解出来ちゃいましたね。

買主側から見ると、1,800万円の損害賠償請求に対して170万円の賠償命令なので、とても勝った!という内容では無いかもしれませんが、説明義務違反の点では完全に勝利しています。

家を建築してしまっているので、解約とか解除という訴えでは無かったのですが、取得するか否かの判断に重要な影響を及ぼす事実を知らされなかった事による解約や解除の事例も存在します。

ケースによって異なる部分がありますが、もし不動産業者の説明が無かった場合や、虚偽の説明があった場合はコメント欄からご相談を投げかけて見て下さい。

こちらでなくても、お近くの法律家に相談するとか、何らかの光が見いだせるかもしれませんので^^


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