相続においての非嫡出子の法定相続分の扱いが改正されています。
平成25年12月5日、民法の一部を改正する法律が成立し、同月11日公布・施行されました。
法定相続分を定めた民法の規定のうち非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた部分を削除し、嫡出子と非嫡出子の相続分を同等(嫡出子:非嫡出子=1:1)にしました。
この改正は、平成25年9月5日以後に開始した相続について適用することとしています。
法定相続分を定めた民法の規定のうち非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた部分を削除し、嫡出子と非嫡出子の相続分を同等(嫡出子:非嫡出子=1:1)にしました。
この改正は、平成25年9月5日以後に開始した相続について適用することとしています。
さて具体的にどういう扱いなのか見ていきましょう。
相続と非嫡出子の法定相続
相続が発生し、非嫡出子の存在が明らかになり、その相続でのもめ事の事例が、世の中には多く存在していました。その為、非嫡出子の法定相続分についての取り決めを、現代に沿った形で改正されたのが前述の改正です。
法定相続分について、見ていきましょう。
この子は間違いなくY男さんの子供なんです・・・
M子さん、認知の事は本当なの
お義母さんは知っていたんですか!?
M子さんには申し訳ないと思うけど、子供には罪は無いでしょう?
皆して私を騙していたんですね!
Y男さんが亡くなって初めて、外に他の女性が産んだY男の子供がいるという事が判ったM子さん。
他人事ではなく、案外とよくある出来事なのです。
整理しましょう。
Y男さんが亡くなることで、お義母さん(M子から見て)の面倒を誰が見るのか?という問題が改めて持ち上がった訳ですが、元々折り合いの悪いM子さんは同居する訳も無く、Y男さんが亡くなって以降、ほとんど行き来が無くなりました。
次男であるY明さんは仕事の都合で遠方に居住しており、母親が家を離れたくないという意志もあり、同居は不可能でしたが、度々様子を伺い心配をしていたそうです。
高齢の母親の一人暮らしは当然心配で、心を痛めていた所、Y男さんの子供であるY人君と母親のAさんとの同居を母親が望んだ為、Y明さんはそれに賛成し、Y人君とAさん、そして母親との同居生活が始まったのです。
この段階で、母親の財産は現金3,000万円と居住している土地建物(時価6,000万円)、長男であるY男さん家族が住んでいるマンション(時価3,000万円)でした。
なぜあの女がお義母さんの家にいるのよ!
お義母さんはあの泥棒猫に騙されているのよ!
お義母さんはあの泥棒猫に騙されているのよ!
じゃあ、義姉さんが同居して面倒見てくれれば・・・?
それだけは絶対に嫌!
それでも2分の1の相続分を Y子2 : Y人1 で分けるから、Y子には3分の1、Y人には6分の1 という相続分が認められるので、”悔しいが(4,000万円分の為に)我慢しよう”とM子さんは考えていたようです。
なんて言うやり取りがありつつ、月日は流れていきました。
その間民法が改正され、冒頭の様に、(嫡出子:非嫡出子=1:1)となった為、お義母さんの相続が発生した場合の法定相続分はY子・Y人4分の1ずつとなります。
その事すらM子は知りませんでした・・・。
遺言と遺留分
Aさんはずっと私の面倒を見てくれてるし、孫のY人も可愛いし、Aさんが本当の嫁だったらよかったのに・・・遺言で財産をY人になるべく残してあげたい・・・
そうだね。でも遺留分ていうのがあるから、僕の分をY人君に全部あげたとしても4分の1(3,000万円分)はY子に行くことになるよ。
少しでも多く財産をY人になるべく残してあげたい・・・
その気持ちはよくわかったよ。
Y人君をお母さんの養子にしよう!
Y人君をお母さんの養子にしよう!
かくしてY人君は孫ではなく養子となり、Y人君とY明さん、亡くなったY男さんは戸籍上兄弟となったのです。
この養子という方法は、相続をする上でよく用いられる方法です。
何らかの目的をもって用いられる訳ですが・・・
相続の結果
月日が流れ母親が亡くなり、その相続が発生しました。遺言があるから集まってよ。
え?遺言?
これは生前公証人役場で作成された、公正証書遺言です。
- 所有する土地・建物は三男Y人に譲る
- 所有するマンションは長男Y男の長女Y子に3分の2、次男Y明に3分の1 の割合で譲る
- 現金預貯金・株券・債権の内、1,000万円は次男Y明に譲る
- 現金預貯金・株券・債権の内、2,000万円は生前面倒を見てもらったAに譲る
何なのよ!?Y子の取り分はもっと多いはずよ!こんなの・・・何かの間違いよ!
いいえ、間違ってはいません。正式な手続きに則っており、遺留分も侵害していません。
法定相続分
Y男:3分の1 遺留分:6分の1(3分の1×2分の1)
Y明:3分の1 遺留分:6分の1(3分の1×2分の1)
Y人:3分の1 遺留分:6分の1(3分の1×2分の1)
12,000万円の6分の1が遺留分なので、2,000万円分がY男さんの遺留分。娘さんはその2分の1になるので(Y人2分の1・Y子2分の1)、1,000万円が遺留分となります。
Y男:3分の1 遺留分:6分の1(3分の1×2分の1)
Y明:3分の1 遺留分:6分の1(3分の1×2分の1)
Y人:3分の1 遺留分:6分の1(3分の1×2分の1)
12,000万円の6分の1が遺留分なので、2,000万円分がY男さんの遺留分。娘さんはその2分の1になるので(Y人2分の1・Y子2分の1)、1,000万円が遺留分となります。
結果としては12,000万円は
Y明:2,000万円分
Y子:2,000万円分
Y人:6,000万円分
A :2,000万円分
という形で分配されたことになります。
という形で分配されたことになります。
義姉さん、僕の取り分の1,000万円については現金で払ってくださいね!
そんな大金払えるわけないでしょ?
じゃあマンションを売るか、見合った賃料を払って下さいね。
そ、そんなぁ・・・
と言う訳で結果的にマンションを売る事になってしまったのです。
まとめ
非嫡出子の相続分が改正されている点は、要チェックです。また裏技的ではありますが、孫を養子にする方法は相続税対策の一環としても行われており、当然それぞれの取り分は変わってきます。
今回の事例のように、面倒を見てくれる他人と面倒を見ない他人であれば尚更このような事が起こりやすいと言えます。
長男の嫁、長男の子供だから・・・という観点ではなく、如何に役に立ってくれたか?親身になってくれたか?という事が、尚一層重要になってくると考えられます。
「終活」という言葉が生まれてからかれこれ時間が経過しましたが、相続財産を当てにしたり、計算をするのであれば、それなりの義務は果たしておくべきでしょう。
また、こうした方法でモメ事が起こらないように、そしてなるべく自分の意志に沿う様に遺言を残しておく事が「終活」の中でも、重要な部分と言えるのではないでしょうか?
いい加減な事言うんじゃないわよ!