農地の相続で絶対やってはいけない事。共有登記は失敗の元!

農地を相続する際に基本的にやってはいけない行為があります。

それが兄弟などでの共有での相続登記です。

失敗の元になっている原因の多くが、この共有での相続登記をする事です。

田舎の農地の相続が発生する方が、これからどんどん増えていきます。

我々現場のプロから見て、農地の相続で絶対やってはいけない基本的な事があるのですが、それを司法書士に依頼してそのまま実行してしまっている方を、よく見かけてしまいます。

法定相続分通りで農地の相続をする事は間違いではありませんが、はっきり言って失敗の元です。

その行為を行っているケースのほとんどが、残念ながら「売却できない」とか、「訴訟事」とか、親族間でのトラブルにつながっています。

今回は、農地の相続においての正しい考え方について見ていきます。

農地の相続でやってはいけない事とは?

農地の相続でやってはいけない事とは?

それはズバリ!

共有登記です。

相続人が複数いる場合、全ての財産を均等に配分するために、相続人の人数と配分に応じて、取り合えず農地を共有登記してしまうケースをよく見かけます。

これは、絶対ダメではありませんが、基本的にやってはいけない行為です。

特に3人以上の登記で、その3人の普段の関係性が薄い場合は、絶対にやってはいけない行為です。

残念ながら、いざ売却!という段階になって売却がままならなくなっているケースの多くが、農地を共有登記で相続してしまっているケースです。


農地を共有登記で相続してはいけない理由


よくあるパターン
  • 長男・・・45歳 東京に在住
  • 次男・・・43歳 地元に在住
  • 三男・・・40歳 大阪に在住

こんな感じのケースがよく見受けられますが、3人だから3分の1ずつの相続での共有登記・・・なんていうのが一番危ないパターンです。

この理由として、

農地の共有登記がダメな理由

  • 三人の経済情況や経済感覚、生活環境等が異なるため、いざ売却!などの時に意見がまとまりにくい ⇒ 取り分や売却価格で折り合いがつかない

  • 新たな相続が発生した時に、関わりの更に薄い親戚同士での話となったり、人数が増えてしまう為、余計に意見がまとまりにくい

  • 農地の管理や維持にかかった費用や労力については、考慮されにくい=認めてくれにくい ⇒ 不公平感が存在してしまう

といったような、要は、話がまとまらなくなるという結果が、数多く見受けられるのです。

これが農地でなければ、まだ共有物の分割等で、個別に譲渡できる可能性があるのですが、農地の場合は、「農地法」「都市計画法」「建築基準法」など、クリアしなければいけない法律が多く存在するので、現実的には不可能です。

とりわけ農地法をクリアしようとした場合は、全員の同意と、県知事などの許可が必要になるので、自分達が思ったように売却できるかというと、そうではないケースの方がほとんどです。

例外として、売却をする為に・・・売却が決まったから相続共有登記をする・・・

この場合は、全員が意見が一致しているから売却をしているので、事前に不動産業者などが相続権者の同意の確認をしますので、問題が起こる事は少ないです。

最終目的である現金での分配が可能である事が一番の理由です。

何となくですが、農地を相続する際は「共有登記」がダメである事はわかったかと思います。

残念な事に、将来的にトラブルになる可能性があるのがわかっているはずの、プロであるはずの司法書士行政書士が、取り合えず言われたとおりに共有登記をしたり、遺産分割したりする事も多く存在します。

言われたとおりにするので、間違ってはいませんが、そのリスクについての説明はほとんどなされないのです。

農地の相続を共有名義で登記をすることは、法律、民法に沿って行われるので間違いではないのですが、トラブル回避にはなっておらず、将来の火種を作ってしまう事を理解しておきましょう。

これは、先々において、自分の子供や孫が直面し、費用と労力をかけて処理しなければいけなくなる可能性がある、とても重要なポイントです。

今は良くても、未来は誰にもわかりません。

私がお勧めするのは、あくまで農地は単独名義で相続し、差額を他の現金等で埋め合わせる方法です。

走する事で、その農地については自分1人の意志で処分したり、活用したりできるようになるわけですから。

時期を見て、具体的なトラブル事例についても触れていきたいと思いますが、今回は「農地を共有登記してはダメ!」という事だけ押さえておいてください。

農地相続で共有登記した場合の更なる弊害

農地を共有登記した場合売却が難しくなるのが一番の弊害ですが、実は他にも弊害があります。

  • 農地の管理の問題

  • 税金の問題

この2つが将来的に必ずやってくる弊害です。

農地はいずれ耕作放棄地になってしまう可能性が高いです。

農家をする、耕作をし続ける事が将来に渡って難しいのは誰でもわかると思います。

その場合、必ず農地の管理の問題がやってきます。

周囲に迷惑を掛ける為、一定の管理・・・草抜きやゴミの撤去に費用が発生してくるわけですね。

これって誰が払うのでしょう?

また、仮に全員が相続放棄したとしても、管理責任は放棄者の誰かが負うようになります。(国庫に帰属させれば来ないですが・・・)

これも一体誰が払うのでしょう?

普段付き合いの無い親戚同士や、身内同士でその借金の押し付け合いが始まるのが見えてきませんか?

かと言って売ろうにも売れない・・・。

もう悲惨なものです。

誰かが男気を出して処理をしなければ、相続人全員にやってき続ける借金の督促と同じなのです。

逃げれない分、もっと厳しい物とも言えます。

最初、相続時に共有登記をしていなければ、こんな問題は相続した1人にしかやってきません。

逆に言うと、単独相続していれば1人で対処できるのです。


農地の相続では共有登記は絶対してはダメ!

農地を共有登記しても大丈夫なケース

例外として農地を共有登記しても大丈夫なケースがあります。

  • 農地の取り扱いについてお互いに約定書を交わしたり、それを公正証書にして定めているケース

  • 売却が確定しているケース


  • お勧めはしませんが、将来的なトラブルを避ける行動をしていた場合は農地を共有登記しても大丈夫だといえます。

    これまで述べてきたように、農地の共有登記はトラブルの火種です。

    しかし、相続をする際にお互いで農地の取り扱いについて取り決めを書面でしておけば、そのリスクをある程度回避できますので、どうしても共有登記をしなければいけない状況があるのであれば、公正証書にして定めておくと良いでしょう。


    また売却が確定しているケース、もしくはこれから共有者全員の意志で売却する事が決まっているケースについても、問題が発生する事はほぼありませんので、共有登記しても大丈夫なケースと言えます。

    これから売却するケースでは、一応売却の意志確認を書面でしておくと尚良いでしょう。



    いずれにしても農地の相続は簡単そうでトラブルの火種を含んだものになります。

    あなたの世代では大丈夫でも、子供や孫の代では大丈夫であるという保証はどこにもありません。

    まるでどこかの国の年金制度みたいなものです。

    先延ばしにすればするほど傷口は広がっていくものです。

    相続時には十分なすり合わせの話し合いが必要ですので、きちんと実務を解っているプロの行政書士などに相談すると良いでしょう。

    コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    アバター画像

    宅地建物取引士・行政書士です。 農地の売買、農地転用、任意売却、離婚相談、相続相談をメインに実務を毎日こなしています。 困った時はぜひご相談を!