「農地を売る方法」は簡単にいうと2種類あります。
- 農地を農地として売る
- 農地を農地以外の利用目的に応じて転用申請を行い許可後売る
まずはどちらの方法での売却になるのかを見極めます。
⇒農地の種類と立地の確認
>農地の立地(種類と区域)によって売却の方法が変わるので、動き方も変わってきます。
それぞれの立地区分に応じた具体的売却方法について見ていきましょう。
皆様には間違った、ズレた説明を身に付けないで済むように、農地の売買と農地転用のプロである私が説明します!
※ここでは区域別に説明していますが、非線引き区域の第3種農地を主眼に説明しています。
目次
農地を売る方法を確認する
何も作られていない休耕地や、荒れてしまった耕作放棄地を目にすることは珍しくなくなっていますね。農家の高齢化が問題になってから久しく、後継ぎがいないために農地を売りたい人、農地を相続した結果、農業ができずに不要になっている人が急増の一途です。
このような時代の流れに逆らうように、農地を売るには農地法という、規制という名の壁が、昭和の感性のまま立ちふさがっているのです。
では農地を売るにはどうすればいいのでしょうか?
農地を売る方法は2種類と述べましたが、まず農地を売る為には、
を見極める必要があります。
- 農地を農地としてしか売買できない農地
- 農地を転用申請し売買できる農地
農地を農地としてしか売買できない農地
農地を農地としてしか売買できない農地の需要は極端に低い!
農地を農地としてしか売買できない場合は、農地法第3条の許可申請によって、農家への売買のみが可能となります。
農地を農地としてしか売買できない場合は、農地法第3条の許可申請によって、
「
農地は用途が耕作と決まっており、
売りたい場合の相手先がかなり限定されるうえに、農業人口が激減しているので、売却は非常に難しくなってしまいます。
”売れない”とは言いませんが、限りなくそれに近い状況だと思ってください。
農家の権利については、各地方自治体によって、耕作している農地の面積などで規定されており、その基準を満たしている者が”農家”に該当します。
私が住んでいる地域では3反以上の農地を所有していることが、基準となっています。
ただし、この制限は“農地”についてであって、“農地以外の使用目的”での売買であれば、誰にでもと言う訳ではありませんが、ほぼ誰にでも売ることができます。
つまり、農地を農地以外(宅地や雑種地)の利用目的であれば、買い手が農家や農業参入者に制限されないので、農地以外の使用目的で、農地転用の許可が下りるかどうかが1つのポイントなのです。
令和5年4月1日より農地法第3条の改正があり、
農地法第3条第2項第5号
一定の経営面積を有する事
という面積の規定が撤廃されました。
これにより、⇒現在は営農目的であれば誰でも可!
となっていますが、あくまで営農目的でなければならず、農地を農地としての売買のハードルは下がりましたが、そもそも農業をする人が増えているのか?という根本的な問題がありますので、実務上の現場では大きな影響はない状態です。
農地法第3条第2項第5号
一定の経営面積を有する事
という面積の規定が撤廃されました。
これにより、⇒現在は営農目的であれば誰でも可!
となっていますが、あくまで営農目的でなければならず、農地を農地としての売買のハードルは下がりましたが、そもそも農業をする人が増えているのか?という根本的な問題がありますので、実務上の現場では大きな影響はない状態です。
農地を転用申請し売買できる農地
農地を転用申請し売買できる農地は需要に応じて売買できる
農地を転用申請し売買できる農地の場合、買い手側のニーズによって農家以外の用途で売買する事が可能になるので、売却の可能性は高まります。
農地を転用申請し売買できる農地の場合、買い手側のニーズによって農家以外の用途で売買する事が可能になるので、売却の可能性は高まります。
農地を売る2種類の方法のうち、後者の転用可能な農地であるならば、売却の可能性があり得るので、何はさておき、あなたの所有する農地がどちらに該当するのか?を把握しましょう。
農地の売買の大部分が、この転用申請による売買になります。
あなたの農地はどちらの売却方法に該当するか確認しよう
農地転用が許可される要因としては、「立地基準」と「一般基準」という2つの基準が関係します。まずは立地基準を確認し、どちらの売却方法に該当するかを判断します。
「一般基準」については、どちらかというと概ね買主側の条件ですので、参考までに記載してみますね。
- 立地基準の確認
- 一般基準の確認
立地基準の確認
「立地基準」とは、農地の区分で許可・不許可(区分は地域や土地ごとに定められている)を決めるもので、優良で大規模な農地ほど許可されず、市街地に近いほど許可されやすい傾向です。まずは、農地以外の物への転用が可能かどうか?を確認しましょう。
※clickすると拡大します。
原則不許可(農地法5条許可申請)に該当する農地は基本的に、農地を農地としてしか売買できない農地となります。
原則許可農地法5条許可申請)に該当する農地については、立地を確認し、その立地内での可能な転用行為と方法で売却が可能となります。
原則許可農地法5条許可申請)に該当する農地については、立地を確認し、その立地内での可能な転用行為と方法で売却が可能となります。
どの種類の農地に該当するのか、どの区域に該当するのか?によって、2種類の売り方のいずれに該当するかを判断しなければいけません。
立地基準では、農地の種類と区域によってそれぞれ判断されます。
農地を売却するための確認事項
※例外が稀にありますが、基本的な考え方はこれでO.Kです。
- 農地の種類を確認する・・・第3種農地か? ・第3種農地以外であれば、農地を農地としてのみ売却
- 農地がどの区域に存在するかの確認 ・市街化区域 ⇒ 届け出で売却可能
・第3種農地であれば区域の確認
・市街化調整区域 ⇒ 農地を農地としてのみ売却(建築を伴わない転用行為は可)
・非線引き区域 ⇒ 農地転用許可を得る事で売却可能
※例外が稀にありますが、基本的な考え方はこれでO.Kです。
農地から農地以外の土地に変更することを”転用”といいます。
残念ながら転用行為はすべての農地で可能ではありません。
農地を売る為には、この転用行為が許可されるかどうかが、一番重要な要素になりますので、まずはその農地が転用可能かどうかを知る必要があります。
立地基準から、第3種農地以外は原則不許可で望み薄です。
簡単に言うと、第3種農地かどうか?を最初に確認してください。
第3種農地以外の農地であれば、売却の可能性が低い、農地を農地として売る方法になります。
第3種農地であれば、都市計画区域区分を確認します。
市街化区域か調整区域か非線引き区域ですね。(ごく稀に未線引きもあります)
第3種農地が存在している地域(立地条件)によって、更に規制がかかります。
第3種農地であった場合
- 市街化調整区域の農地は原則不許可なので、既存集落などの例外規定が適用されない場合は、農地を農地としてしか売却できません。 ・・・※調整区域の第3種農地は建物の建築目的では不許可になりますが、資材置き場等の建築を伴わない場合は申請内容に応じて許可になります。
- 市街化区域の農地は届出制の為、事前に届出をすれば自分で(4条)地目変更も可能ですし、買主側(5条)で地目変更する事も可能です。要は農地法上の規制はほぼかからないので、売却は宅地の売却と大差ありません。
- 非線引き区域の農地は許可制なので、売主・買主双方での農地転用第5条申請許可後、売買が可能になります。
調整区域の第3種農地の場合の注意点
農地を農地として売る方法
建築を伴わない(資材置き場等)の転用許可によって売る方法 ・・・この場合は建築が出来ない土地の為、周辺の宅地相場よりもはるかに低い価値となります。
望み薄=岩盤規制に跳ね返される・・・とも言えますが、政治の力を利用すれば可能なケースもあります。
かなり大掛かりな形になりますが、100%ダメという訳ではありません。
申請のプロと政治が力を発揮すれば、大きなショッピングモールができたようなケースも存在しますから。
かなり大掛かりな形になりますが、100%ダメという訳ではありません。
申請のプロと政治が力を発揮すれば、大きなショッピングモールができたようなケースも存在しますから。
まずは、所有する農地がどの区分に該当するか、地域の農業委員会(行政の組織なので市区町村役場)に聞くのが確実です。
一般基準の確認
「一般基準」は売主が該当する部分は少ないですが、参考までに。「一般基準」とは、農地転用の申請目的が達成できるかどうかを判断するもので、単に農地をつぶして更地にしておきたいといった、安易な目的では認められません。
農地を売買するからには、利用目的の主体が買主にあるため、売買での転用許可申請は、売主と買主の両方が申請者になり、おおむね次のような基準で判断されます。
基本的には買主の目的と状況の判断ですので、知らなくても問題はありません。
- 申請目的を実現できる資力や信用がある
- 転用する農地の関係権利者から同意を得ている ・・・売主・買主
- 転用許可後速やかに申請目的のために使う見込みがある ・・・買主
- 許認可が必要な事業で許認可を受けられる見込みがある ・・・買主
- 事業のために必要な協議を行政と行っている ・・・買主
- 転用する農地と一体に使用する土地を利用できる見込みがある
- 事業の目的に適正な広さの農地である ・・・買主
- 周囲の農地等への影響に適切な措置を講じる見込みがある ・・・ほぼ買主
- 一時的な転用では農地に戻されることが確実と認められる
これらの条件から、「目的通り使えないなら転用させません」と分かります。
行政の考え方として、農地は守るべき土地であり、食料という不可欠な物を生み出す用地を、むやみに無くすことはしない、ということなのです。
区域区分によるそれぞれの農地の転用申請による具体的売却方法
これまで農地の種類・・・「立地条件」と「一般条件」について説明し、第3種農地以外は売却方法が農地としての売却に限定される事を解って頂けたと思います。そして、転用許可、転用申請を行う事で第3者への売却の可能性が広がる事も説明しました。
実際には区域区分でその転用申請・転用許可の取り扱いが違ってきます。
「区域区分によって」出来る事と出来ない事があるので、細かく見ていきます。
- 市街化区域の農地の売り方
- 非線引き区域の第3種農地の売り方
- 調整区域の第3種農地の売り方
- 第3種農地以外の農地の売り方
市街化区域の農地の売り方
途中の説明にも書きましたが、市街化区域農地は農地であるが、実務上は宅地とほぼ変わりません。届出制である為に、売り出すより事前に4条申請(自己利用)にて宅地にする事も可能ですし、買主が見つかってから5条申請(第3者利用)で売買しても大丈夫です。
農地法よりも建築基準法や都市計画法などのその他の法律をクリアする事を考えておくと良いくらいです。
なので、売却方法についてはあなたが置かれている状況によって判断し、事前に4条申請で宅地化するなり5条申請で顧客を探すなり選択してください。
それなりのニーズが見込めますので、不動産業者へ査定・売却依頼しましょう。
もちろん、農地を農地として売る・・・農地法第3条許可申請(営農目的)での売買も可能ですが、確率はかなり低いので現実には届出での売買となると思います。
非線引き区域の第3種農地の売り方
非線引き区域の第3種農地については許可制である為、のいずれかになります。
売却しやすいのは当然前者ですので、農地法第5条許可申請(第3者利用)での売却をする形が妥当です。
それなりのニーズがありますので、不動産業者へ査定・売却依頼しましょう。
時間が何年もかかっても良いのであれば、農地法第4条許可申請(自己利用)で宅地化してから売却しても大丈夫ですが、恐らくほとんどのケースで損をする事になると思います。
もし不動産業者でそれを進めるのであれば、余程の抜け道があるのか、ド素人かのいずれかです。
調整区域の第3種農地の売り方
調整区域の第3種農地については、建築を伴わない転用行為は許可を受ける事が可能です。資材置き場や露店駐車場などが該当します。
仮に事前に農地法第4条許可申請(自己利用)で農地以外の地目に変更したとしても、第3者が建物を建築する事はできません。
農家住宅や分家住宅、既存集落といった特殊なケースで建築が可能なケースもありますが、基本的には第3者が建物を建築する事はできないのです。
それが理由で売却する際には、相場の半値以下・・・ほぼ価値はないという判断がなされ、金額的には悲しい結果でしか売却できません。
なので調整区域の第3種農地の売却方法は、
- 農地を農地として売る・・・農地法第3条許可申請(営農目的)での売買
- 農地を雑種地化し売る・・・農地法第4条許可申請(自己利用)
- 農地法第5条許可申請(第3者利用)での売買・・・建築を伴わない、建築を出来ない為制限される。
この3種類の方法となります。
需要は低いかもしれませんが、不動産業者へ査定・売却依頼しましょう。
第3種農地以外の農地の売り方
第3種農地以外の農地は特殊事例を除いて、この方法しかありませんので、ラッキーパンチが当たる事を祈るしかないでしょう。
もちろん農業の盛んな地域や、農家が多い地域であれば売買の可能性もあります。
しかし日本全国の大部分において、農地は耕作放棄され、不要な物となっている現実を考えると、売却はかなり厳しいものであると認識しておきましょう。
私は人口10万人程度の地方都市に住んでいますが、現実的に第3条による営農目的の売買は20年間したことがありません。
行政書士としても第3条の申請は片手でお釣りが来ます。
知り合い同士の売買の申請のみですね。
私が携わった99%以上が4条、5条申請で、売買についても宅地・もしくは雑種地です。
人口がもう少し少なければ、農家もそれなりにいるのかもしれませんが、基本的には誰かにあげるくらいのスタンスで考えておいた方が良いと思います。
ちなみにうちの田んぼ2.5反貰ってくれる人を募集してます^^
農地を売る方法についてまとめ
農地を売却する方法は大きく分けて2つあります。一つは農地を農地として売る方法、もう一つは転用申請をして農地以外の用途にする方法です。それぞれの方法には、売却できる相手や条件に違いがあります。
農地を農地として売る場合、購入できるのは農家や農業法人のみです。農業人口の減少が進んでいるため、農地を農地のまま売却するのは難しいのが現状です。農地法第3条の許可を得る必要がありますが、需要は非常に限られています。
転用が可能な農地の場合、農地以外の目的で利用することができ、購入者の範囲も広がります。
転用申請が必要であり、農地法第5条に基づく許可を取得した後、農地を宅地や商業用地に変更して売却できる可能性があります。
農地売却のポイント
農地の種類(第3種農地かどうか)を確認する。
立地基準(市街化区域、非線引き区域など)によって転用の可否が決まる。
市街化区域の農地は転用しやすく、売却の可能性が高い。
調整区域や第3種農地以外の農地は売却が難しいことが多い。
農地を売却する際には、まず地域の農業委員会に相談し、どの区域に該当するかを確認することが重要です。
勉強になりました。