農地を売買する実例の現場レポート。分割・区画する【実録】

農地を売買する場合には、農地法を筆頭に様々な法律をクリアしなければいけません。

また、農地転用を行う際には農業委員会経由で知事の許可を受けなければいけません。

今回は住宅地にしか向いていない為に、田を区画して売却する事についての事例を紹介します。

基本的には複数回に分けての売買になるのですが、個人ができる範囲の売買と、不動産業者が買い取って分譲する場合についてお伝えします。

地域によっては運用上無理であって、あてはまらないかもしれませんが、参考にはなるでしょう。


Contents

農地を分割・区画して売買する


まずこの農地の置かれていた状況です。

  • 非線引き区域の田(旧市街化区域)

  • 面積:1,200㎡(開発許可が基本的に必要)
  • ※開発許可の要件が1,000㎡です。地域によっては2,000㎡だったりしますので、自治体に確認が必要です。

  • 接道:現況あり(4m未満の個所が有り)

関連するクリアすべき法律
  • 農地法5条申請

  • 開発許可


この状況の農地を分割売却するとします。

まずは農地を宅地として商品に加工する事を考えます。

関連法規をクリアし、売りやすい環境を整える事を考えるのです。

個人(仲介)で売買する場合

個人で売却する場合の流れ
  1. 売却計画を立てる(農地法・開発許可についてのクリアを考える)

  2. 買主を探す

  3. 測量・分筆

  4. 造成工事

  5. 引き渡し
②~⑤を繰り返すようになります。

個人で複数回に分けて、不動産業者の仲介などで複数の買主を探し売却する事は可能です。

しかし、全体の1,200㎡の区画形質の変更(分譲)を行う場合は、必ず開発許可が必要となるので、この段階で、まとめて工事を行う事は不可能です。
開発行為とは
開発行為とは、主として建築物の建築または特定工作物の建設のために行う、土地の区画形質の変更をいいます。

 建築物とは土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱もしくは壁を有するもの等をいい、建築とは、新築、増築、改築または移転を指します。
特定工作物とは、コンクリートプラントその他周辺地域の環境悪化をもたらすおそれのある工作物(第一種特定工作物)、ゴルフコースその他大規模な工作物(第二種特定工作物)をいいます。

区画形質の変更とは、公共施設(道路、下水道、公園、緑地、広場、水路、運河、河川、消防用の貯水施設)の整備を伴う土地利用形態としての区画を変更することや、切土や盛土等によって土地の形状を物理的に変更すること、農地や池沼を宅地にするといった土地の性質を変更することを指します。

したがって、
1)単なる土地の分合筆
2)すでに宅地となっている土地について、既存の建築物の除却や、へい、かき、さく等の除却、設置が行われるにとどまるもので、造成工事や公共施設の設置を伴わないもの
3)建築物の建築または特定工作物の建設自体と不可分一体の工事と認められる、基礎打ちや土地の掘削等の行為
4)土地の利用目的が、建築物または特定工作物のためではないと認められる造成行為については、開発行為には該当しません
開発行為をする為の開発許可を取得するには、それなりの要件や免許が必要だからです。

宅地分譲をする場合は不動産業の免許が必要だったり、資金の照明が必要であったり、幹線道路までの幅員が4m以上必要であったりと、個人では不可能なのです。

そこで考えれる方法が期間を空けての2期、3期の売却です。



1,000㎡未満であれば開発許可は不要なので、1,000㎡未満の部分・・・区画A・Bを売り、3年以上経過した後区画C・Dについて売却するという形です。

3年というのは私の地域の運用規定ですので、地域によっては1年なんかの場合もあるようです。

仲介の場合手取り金額が高くなるので、こういった方法を考えられる方も居られますが、現実的には3年以上時間を要するので、地価が下がっている地域ではほぼ意味のない行為になってしまいます。

年間7%の下落率だと3年で20%以上の値下がりが考えられるので、”安い”と感じても不動産業者に一括で売却した方が得になるケースとも言えます。

また複数回の不動産売買は、宅建業法にも触れる可能性が高いので、特殊な場合を除いてはやはり不動産業者に任せる方がいいでしょう。

※今回の事例の場合は、幹線まで4m未満の部分があり、いずれにせよ開発許可が下りませんので、2期以上に分けて売却する必要があります。

ここまでの説明は開発行為を逃れる為の行為と言えます。

開発許可の要件を満たさない場合に仕方なく行う方法なのですが、個人での売却の場合はその他にも面倒な事があります。

買主を見つける毎に、分筆や造成工事を行う(造成は買主がしてもO.k)必要があるので、作業の手間や買主が見つかるまでのストレスがかかってきます。

今回の例で言うとBだけ売れて、Aがずっと売れない・・・なんてことも起こりえますので、これは大変なストレスになります。

売れないリスクも抱えなければいけないんですね。

不動産業者による分譲

これは簡単です。

不動産業者が買い取ってくれるので、法律のクリアはもちろん、工事やその他の作業のほとんどをやってくれます。

不動産業者は分譲計画を立て、その計画に基づいて購入金額を提示してくれます。

その価格に納得するかどうか?だけを悩めば良いだけです。

価格の根拠は、分譲計画を立てた上での必要費用と、企業の利益を計算した上でのものになるので、仲介で売却するよりは企業の利益の分だけ手取り金額が安くなります。

前述の個人での分譲が不可能であったり、面倒な場合や、地価の下落を見越すのであれば、不動産業者に買取してもらうのが良いでしょう。

結果的に今回のケースでは、2回に分けて不動産業者が買い取る事になりました。

個人間であろうが不動産業者の買い取りであろうが、開発許可が取れない以上2期に分けなければ売却できなかったのですが、地姿の関係で売れないリスクを抱えたままになる事を、地主さんが嫌がったのです。

個人で農地を売却した方が良いケース

今回の土地の場合や、開発許可が必要な場合は、不動産業者に買い取ってもらった方がメリットは大きいでしょう。

個人で仲介によって売却しても、おそらく手取りの金額はそんなに変わりません。

しかし明らかに仲介によって、個人に売却をした方が手取りが増えるケースもあります。

  • 1,000㎡未満(開発許可が不要)の農地

  • 道路負担が不要(少ない)な農地

この2つの要件を満たす場合は仲介によって個人間の売買を行ったほうが手取り金額は上がります。


開発許可が不要なので、農地法をクリアしていれば大丈夫です。

2期に分けて売却する必要はないですし、進入路を作ったりする道路負担も必要ありませんので、造成工事の費用(売主がしても買主がしても)の負担も少なくて済みます。

わざわざ不動産業者に安く売る必要が無いパターンです。

また、売れないリスクについても、ほぼA~Cは同じ程度の条件で、同じ程度のリスクと言えるので、Aから売らなければいけない・・・なんていうストレスは少ないと言えます。

手取りの金額は多いに越したことは無いですが、自身が抱える売れないリスクについて十分に理解した上で、売却方法については考慮しましょう。

実際は自分の欲望で、売れないリスクが見えている人は少ない・・・

コメントを残す