農地を宅地にしても高く売れません!騙されたらダメですよ?

農地を宅地にして売ると高く売れる

高く売るには宅地に転用するのがベスト

なんていう言葉を絶対に鵜呑みにしてはいけません。

だって、間違っていますから。

これって農地の売買をしたことが無い人が書いた間違ったキャッチフレーズであるという事は、プロの不動産業者や行政書士であればすぐにわかる事です。

100のうち10くらい正しいかもしれないが、90の場合で間違っているパターンの出来事で、10の事を大きく大きく膨らませている表現なのです。

正直、農地を売却したい人を欺く表現だと感じてしまいます。


また、「農地を宅地にして売る」というのもそもそも間違いです。

農地を宅地にして売る」で検索すると、上位に出てくる答えは余裕で間違っています。

これができるのは免許を保有した不動産業者や建設業者だけです。

農地を宅地にする予定で第3者に売る契約」はできますが、宅地にした後に売却をするにはそれなりの期間を要します(市街化区域の農地はできるので除外する)。



実際はリスクが増大するケースの方が多く、残念な行為である事であるのです。

この記事ではなぜこれが間違いなのかを見ていきます。

農地を宅地にして売却できる農地と出来ない農地


宅地化=転用できる農地は限られています。

ここでの宅地化は建築ができる土地という前提です。

宅地化できる農地
  1. 市街化区域の農地

  2. 非線引き区域の第3種農地

基本的にこの2種類に該当する物だけ、第3者が購入して建築が可能な宅地へと転用が可能なのです。

これ以外の農地は、建築が出来ても直系尊属だけであったりして、第3者は建て替えを行う事が出来ないただの土地にしかなり得ません。

もしくは建築が出来ない価値がほぼ無い雑種地などにしか転用できないのです。

まずはこの2種類に該当するかどうか?が、宅地化するためのポイントです。

この記事のポイント
  1. 市街化区域の農地の場合
  2. 非線引き区域の第3種農地
  3. 農地を宅地化すると高く売れるの間違い
  4. 農地を宅地化するまとめ


市街化区域の農地の場合

市街化区域の農地の場合は、転用行為については届出制の為、農地法についての制限はほとんどないといえます。

開発行為などの都市計画法や、埋蔵文化財などの他の法律での縛りをクリアできれば、宅地化=転用については問題ありません。

非線引き区域の第3種農地


売却可能な大半の農地が該当する、非線引き区域の第3種農地についてですが、この場合、

宅地化=転用行為については、知事の許可制になります。

農地転用の申請目的と申請内容(事業内容)に対する実行能力(資金能力など)が審査されるのです。

農地転用の申請通りに転用行為が行われなければ、農地法の縛りから解放される事はありません。

つまり、”家を建てる”という申請内容であれば、家を建てなければいけないのです。

ここで、2種類の転用方法が考えられます。

農地法の許可申請

  1. 農地法第4条の許可申請
  2. ・・・自身で自身の目的の為に転用する

  3. 農地法第5条の許可申請
  4. ・・・第3者が第3者の目的の為に共同で転用申請する

宅地化=転用するにはいずれかの許可を取得する必要があるのです。


農地法第4条の許可申請

宅地化=転用を自身で自身の目的の為に許可申請するのが農地法第4条の許可申請です。

売却を目的として宅地化=転用するのであれば、一度自分で雑種地などにした後に売却する形になります。

この場合リスクがあります。

  • 転用に時間が掛かりすぎるリスク
  • 売れないリスク

転用に時間が掛かりすぎるリスク

転用行為を完結しなければ、農地法の縛りから解放されませんので、まずは申請通りに転用行為を行う必要があります。

何も問題が無ければ3か月程度で転用行為が完了する事もあり得ますが、測量やその他の影響で、半年以上の期間が掛かる事が多いです。

また自治体の運用で、事業を〇か月以上行っている事”を条件として、建築確認申請の受付を行ったりするケースもあります。

〇か月以上の部分は6か月であったり、1年であったりします。

これは無差別に売却目的で転用行為を行い、農地を守る観点や不動産業者の脱法行為をさせない為の観点から、農地転用の申請を正しく行わせる運用をしているのです。

転用行為に半年以上かかったたとすると、今の時代であれば、近隣相場が下がっている可能性があります。

というか、都市部などの人口密集地でないかぎり(そもそも都市部の農地は市街化区域に該当する)、まず下がると考えておいた方が正しいでしょう。



売れないリスク


また、費用を掛けて雑種地等にしたのは良いが、何時まで経っても売れないという可能性もあります。

そして万一、費用を掛けて売れなければ、悲惨な結果が起こり得ます。

という事で、農地法第4条の許可申請による宅地化=転用での売買は、あまり現実的ではありません。

農地法第5条の許可申請

売買するのであれば、後者の買主(第3者)の目的通りに申請をして、許可を得る必要があり、そのうえで目的通りに事業を行う必要があるのです。

転用行為を行う際には既に買主が決まっていて、目的と内容が定まっているので、売主側で宅地化して売る行為ではありません(契約内容で取り決めをします)。

売主と買主が宅地化する前提で売買する形となります。

面積についての規制

そもそも農地は面積が大きいものがほとんどです。

100㎡や200㎡などの小さな面積の物は少なく、家を建てる為の面積にするには区画化する必要があります。

農地法の運用で、一件当たり500㎡までという運用をしている所が多いと思いますが、一括で農地を処分しようとするならば、不動産業者や事業をする者に売却する必要性があります。

その場合必ずといっていいと思いますが、買主側で工事を行うので、これも農地を宅地化して高く売るという事にはなりません。

区画化して売る場合には、5条許可申請が必要になるので、これも農地を宅地化して高く売るという事にはなりません。



以上の事から、現実的に農地を宅地化して売ることが出来るのは、市街化区域の農地についてのみだと言っても良いという事になります。

農地を宅地化すると高く売れるの間違い

農地を宅地化すると高く売れるというのも間違いです。

それは、高く売れるのではなく、見た目でわかりやすくなるので、”売れやすくなる”というのが正しい表現です。

化粧をして綺麗に見せたり、オシャレをして綺麗に見せるのと同じで、いい印象を与えるようになるのは間違いありませんが、だからと言って高く売れるというのは間違いです。

前段での説明で、「現実的に農地を宅地化して売ることが出来るのは、市街化区域の農地についてのみ」である事は説明しましたが、市街化区域の土地にも相場はあります。

需要と供給で成り立っているのが不動産の価格なので、それを逸脱する事はありません。

キレイに宅地化したからと言って、価格が跳ね上がる事は無いのです。

その宅地の相場から逆算して出てくるのが農地の価格なので、宅地化したから高く売れるというのは間違いですね。

単純に売買価格が高くなるだけで、手取りの部分は変わりません。

農地価格の構成要素


2000万円が宅地相場の地域であれば、2000万円から工事費と経費を差し引いた物が農地の価格となります。

売買価格の総額は大きくなりますが、決して手取りが増えるというお話では無いのです。

不動産業者は工事をさせたがる


不動産業者は売買価格×3%+6万円という手数料商売なので、売買価格が大きい程収入が上がります。

という事は不動産業者は宅地化して総額が大きい方が実入りがあるので、当然そちらを進めますよね?

もちろん売りやすくなるというメリットはありますが、その裏にある事実も認識しておきましょう。


何よりも、売れなくても不動産屋は困りません(先にピンハネしたりもしているから)し、売れたら手数料を多くもらえます。

それは、全く責任を負う必要が無いのですから、そうしたがるのは自然な流れだったりします。

農地を宅地にして売ると高く売れる まとめ

そもそも都市部などの農地であれば、需要があれば既に一度や二度は不動産業者やマンション業者から売却や運用の話があるはずです。

つまりわざわざ宅地にする必要は無く、それなりの価格で売却できてしまう訳です。

問題なのは、地方都市の人口減少している所の農地であって、ニーズが減少している所です。

こちらの市街化区域の農地も、恐らくは不動産業者やマンション業者から売却や運用の話があったと思います。

しかしニーズの減少から、売値も下落していますしこれからも落ちていくでしょう。

そういった場合は、高く売る事よりも早く売る事を主眼においておくと、結果的に高く売れる事になります。

わざわざリスクを背負って宅地化しなくても良いのです。

非線引き区域については、地域の運用があるので、それに則り、早く売る事を主眼において下さい。

場所によっては既に値段がつかないような地域も増えてきているので、スピード重視で処分をする事です。

いずれそれらの地域の農地は、タダでも要らなくなってきます。

大切なのは今の価値よりも、その農地が子供や孫に負担にならないようにしておく事です。

この事は真剣に考えて欲しいですね。

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宅地建物取引士・行政書士です。 農地の売買、農地転用、任意売却、離婚相談、相続相談をメインに実務を毎日こなしています。 困った時はぜひご相談を!