非線引き区域の農地の売却の実例を現場からレポート!事例1

農地を売るにはどうすればいいでしょう?

農地を売る場合には、農地法を筆頭に様々な法律をクリアしなければいけません。

また、農地転用を行う際には農業委員会経由で知事の許可を受けなければいけません。

地域によって少しずつその運用方法や基準が変わったりしますが、私が実際に行っている農地の売買の実例を数回に分けてレポートしていきますので、あなたの置かれている状況に似ている物を参考にしてください。

Contents

非線引き区域の農地を売りました

農地を売りました。

まずこの農地の置かれていた状況を簡単に挙げます。

  • 非線引き区域の田(旧調整区域)

  • 面積:793㎡(開発許可は不要)

  • 埋蔵文化財の指定地域

  • 一括売却希望

  • 水路・公共下水あり

  • 接道:現況あり

  • 買主はアパート経営予定

といった状況でした。

農地を売るまでの流れとしては
  1. 埋蔵文化財の試掘調査
  2. 売買契約
  3. 測量(場合によっては分筆まで)
  4. 農地転用申請
  5. 農地転用許可
  6. 所有権移転

といった流れです。

それぞれポイントを簡単に説明していきます。

非線引き区域の農地(旧調整区域)を一括売却

その農地、不動産が所在する場所が都市計画法上、どういった地域に該当するのかで、その後の対応が変わります。

今回の事例では、都市計画区域内で昭和48年に線引きが行われていて、調整区域の農地に該当していたのですが、平成16年にその線引きが廃止され、非線引き区域の田という状況です。

※都市計画区域内の土地を市街化区域調整区域に地域分けすることを線引きと言います。

調整区域の農地の場合は、基本的には第3者が農地以外の利用目的での転用は許可されません。(当然例外はあります・・・)

それが非線引き区域(線引きを廃止した地域)になった事で、(農地法の一定のルールを守る事によって)農地以外の利用目的での転用が可能になっているのです。

その基準が旧市街化区域に比べて複雑で、運用規制が重い状況になる事が多いようです。

  • 旧調整区域の農地は、不動産業者等の宅地分譲は認められず、建売分譲であれば認められる

という条件が、今回の事例の自治体にはあります。

つまり、不動産業者に一括で売却しようとする場合には、不動産業者が買い取り建売分譲する場合にのみ農地法の転用許可が下りるのです。

一括売却しようとした場合の規制
  • 旧調整区域の農地は、不動産業者等の宅地分譲は認められず、建売分譲であれば認められる

  • 個人住宅の場合は、面積が概ね500㎡までという規制がある為、一括での売却は不可能です。
  • ※個人住宅の場合であれば2件以上の買主を探す必要が面積の基準によって生じる。

  • 駐車場や資材置き場、アパート経営等の個人住宅以外の目的であれば、必要である面積の許可を受ける事が可能です。

不動産業者以外での一括売却となると、個人住宅以外の目的の買主でなければいけないという事になります。

その農地の立地が、どういった用途に向いているのかによって買主の需要が変わるので、ニーズによっては
一括売却をあきらめる
不動産業者に買い取ってもらう
といった判断が必要になってくるでしょう。

今回のケースでは、買主の目的がアパート経営なので、一括売却については問題ありません。

しかしアパート経営等に向かない立地のものであれば、分割での売却や不動産業者の買い取りを考慮した方が良いでしょう。

埋蔵文化財の試掘調査

停止条件付で売買契約を最初に行うケースもありますが、真剣に文化財が発掘されると、全ての行為がストップしてしまい、発掘調査が終わるまで何もできなくなります。

その為、今回の売買では事前に埋蔵文化財の試掘調査を行いました。

試掘調査の結果、特に問題となる物は出て来なかったので、問題なしという結果を受けて、買主との売買契約を締結しました。

測量・分筆などの行為


図の様な形で現況が道路であっても、登記が個人の敷地のまま残っていたりして、現況と登記が異なる場合があったりします。

今回の土地の現況は5mの道路が接道しているのですが・・・

実際は1.6mの農道と、今回の土地の一部が道路になっている情況でした。

昔、昔に道路に提供しているが、分筆や名義変更がされていないままだったんですね。

自治体に確認すると「建築基準法上の道路とみなしている」との答えだったので、建築については問題ないのですが、現況と登記とのズレを解決する必要があります。

これは農地転用の申請を行う際に、土地改良区という団体から「意見書」をもらう必要があるのですが、この地域の土地改良区では土地家屋調査士による「境界査定」が条件になっています。(境界査定まで言わない地域もありますが、基本的に必要でしょう)

いわゆる測量行為ですね。

敷地の一部が道路なので、分筆も必要です。

この測量・分筆行為までは、農地転用を申請する上で売主が最低限しておかなければいけない行為といえるでしょう。

農地転用申請・農地転用許可

農地法の申請はその目的と実行を審議し、妥当であるかどうかの判断がなされます。

売買がなされる場合は農地法第3条もしくは第5条の許可申請、市街化区域においては届け出が必要になります。

今回は農地利用以外の目的で第3者へ売却しますので、農地法第5条の許可申請とその許可が必要になります。

<農地法第5条の許可申請に最低限必要な物>
  • 土地の謄本

  • 測量図

  • 土地改良区の意見書
  •  意見書をもらうための書類は各改良区によって細かさや内容が異なります。

     造成計画図・測量図・雨水、排水放流の同意金・架橋承諾・架橋承諾金・・・etc

     その工事を行う事による周辺への影響を考慮したり、周辺の農地に対する影響や、農道・水路の利用に関する事の許可が必要になります。
  • 地番地目図

  • 建物の配置図
  •  
     建築の計画について精査されます。

  • 建築平面図

  •  建築の計画について精査されます。

  • 現況写真

  • 資金計画書
  •  
     農地以外の利用目的の事業を行うにあたって、その計画性を精査されます。

  • 資金証明書

  •  申請内容が最後まで行われる事の前提として、事業にかかる資金が存在する事の確認

これらが最低限必要な物で、場所や農業委員会によってはその他の書類が必要になります。


農地法5条申請が許可されれば、その許可を以って所有権の移転ができます。

場合によっては売主側で宅地にした後に売買したり、許可後の内容については売買契約で定めておきます。

今回は当然、買主側ですべてを行うので、許可後(申請の翌月末)に速やかに取引を行いました。

めでたしめでたし^^

農地を売る時の今回のポイント

まず何はさておき文化財の件はクリアしなければいけません。

次に売却の方法を考えます。

時間を掛け、分割販売するのが良いのか、今回の様に一括で売却するのが良いのかを判断します。

今回のパターンはどちらかと言えばラッキーな部類だったのですが、向き不向きが必ずあるので、わがままや欲得ではなく、ニーズに合わせた売却方法を考える事が大切です。

また農地の場合は、物件の現況と登記の状況が相違している場合が多く見られるので、測量行為によって境界を明確にし(場合によっては数年かかったりする)、後のトラブルを避ける必要があります。

十分な調査が必要でしょう。

農地法の許可申請までたどり着ければ、余程の無茶をしていない限りは、後は待つだけになります。

いずれにしても、ある程度知っておく事でプロが行う作業の内容が把握できるので、参考にしてみてください。

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