農地転用の基本って案外大手の不動産屋さんの方が全く知らない場合があったりします。
都会では農地を触る事なんてほとんど無いでしょうから。
当然ですが、農地に関わる際には農地法と農地転用が必ず関わってきます。
そこに知ったかぶりの不動産屋さんが入ってくると、ややこしくなりますし、トラブルの元になったりします。
知らないなら知らないなりの動きをしてくれればいいのですが、全く話がかみ合わなかったのには参りました・・・。
そう、農地を扱う際は、農地法に長けている不動産業者や、農地法の申請(農地転用)のプロである行政書士に教えて貰う事が正しいのです。
不動産屋でも当たり前に間違った認識を持つのですから、一般の人が役所の人間に電話で問い合わせても、間違った理解を産む事が当然なのです。
農地法には多くの前提条件が存在し、その前提条件をクリアした体で話をすれば、「出来る!」と判断してしまいますし、一部だけ正しい事を言って話をしても、全部が正しいと思い込んだ答えで理解しがちなのが人間様です。
また、地域によっても多少運用に違いが生じます。
隣同士の市町村でも、運用が全く異なっていて、費用が大きく変わった事もありますし、前提条件が全く異なっている事も有ります。
いわゆる農業委員会の考え方や運用の仕方で、違いが生まれるのが農地であり、農地法です。
ただ、農地転用の基本ベースは同じですので、農地法と農地転用の基本についてみていきましょう。
目次
農地転用の基本と農地法
農地法は昭和 27年に制定された法律で、農地は耕作者自身が所有することを最も適当と認めて,耕作者の農地取得促進,権利保護と土地の利用関係の調整によって,耕作者の地位の安定と生産力増進をはかることを目的とする法律です。
農地改革原則の恒久化と農地改革の成果維持を目指して,農地または採草放牧地の権利移動および転用の制限 (都道府県知事の許可を必要とする) や小作地などの所有制限などを規定している。
1970年に農業基本法の積極的推進のために改正され,生産性の高い農業経営への土地集中,小作料統制撤廃,不在地主承認など零細農耕制の解消がはかられた。
また,1980年には農地の権利移動の許可権限を知事から農業委員会に移し,小作料の物納制を導入するなどの改正が行なわれた。
2000年の改正では農業生産法人に株式会社の参入を認めるなど,農業経営の法人化に向けた規定が加わった。
日本の農業生産を保護する目的で制定された法律です。
農地等の自由な処分行為を規制し、農地の乱開発等を防止している
法律なのです。
昭和27年当時は、まだまだ食糧難で、農業は国の根幹の産業として存在していました。
時は流れ、平成も30年・・・平成が終わると言うこの時代にも、その法律は生き続けているのです。
農地を売買したり、農地以外の物に転用しようとする場合には、農地法という、昭和27年から存在する、高い壁の法律が存在するという事なのですね。
農地の種類を知ろう
農地転用の基本、農地の種類を知りましょう。これ以外の土地で、主として耕作もしくは養畜の事業のための採草または家畜の放牧の目的に供されるものは、とくに採草放牧地というが、農地の意味の中に含まれます。
もっと広い意味での農地は、農畜産物の生産、貯蔵などのための農業用施設用地も含み、農場と呼ばれる。
一般的な田や畑、採草放牧地(牧場)、農業施設が、農地と解釈されます。
農地には農地法上、場所によって農地が以下の様に分類されています。
- 農用地区域 – 市町村が定める農業振興地域整備計画において指定(農業振興地域の整備に関する法律)
- 甲種農地 – 第1種農地の条件を満たす農地であって、市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地等、特に良好な営農条件を備えている農地(以下、農地法施行令)
- 乙種農地 第1種農地 ・・・ 10ha以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等、良好な営農条件を備えている農地
第2種農地 ・・・ 市街地化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地
第3種農地 ・・・ 市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地
農地転用を行う際には、この種類によって可否が変わってきます。
- 農用地区域内農地:原則不許可
- 甲種農地:原則不許可
- 第1種農地:原則不許可
- 第2種農地:周辺の他の土地に代えられなければ許可
- 第3種農地:原則許可
これは、守るべき農地について、何らかの変更を加える場合(転用行為)を行おうとする際に必要になる入り口の条件です。
この条件が意味するところは、第3種農地以外の農地は転用許可が原則おりないと言う事です。
つまり、売買に当たる農地法第5条の許可申請と自己用の第4条許可申請が可能な物はこの第3種農地だけなのです。
第2種農地の場合は、農家住宅や分家住宅といった、直系尊属のみが可能な転用行為が認められるケースがありますが、第3者へは許可が下りませんので、売買での農地転用は不可能だと言えます。
・・・これも当たり前の農地転用の基本ですね。
農地転用の許可と届出
前段では農地の種類について述べましたが、農地転用を行う場合は農地の種類の他に、区域区分(都市計画法でさだめられた)も、転用の要件となります。
これも農地転用の基本ですね。
農地転用の申請では、農地が存在する場所によって農地転用の方法が違います。
- 市街化区域:届け出でo.k! ・・・第3条の場合は許可が必要
- 市街化調整区域:原則不許可 ・・・資材置き場など例外あり(建築が伴うものは不許可)
- 非線引き区域:原則許可
農地が存在する場所の都市計画の区域区分によって、上記の様に異なります。
市街化区域においては、市街化を促進する地域なので、都道府県知事の許可では無く、届け出だけで良い事になっています。
と言って書類を出せばいいのです。
方や、都道府県知事の許可になると、一定の書類と資金の背景の証明、事業計画の整合性等、農業委員会の基準に則った審査があり、その審査に合格し、都道府県知事から許可を得て初めて、売買や造成工事等の転用行為が可能になります。
違反すると罰則もありますし、原状回復命令(農地に戻す命令)などが下されることもあります。
また農地転用には、転用の目的によって申請方法や要件が異なってきます。
以下で、それぞれの農地転用の基本、申請の種類について見ていきましょう。
この農地は転用可能なのか?
- Q1
- 農地がある場所は?
1.市街化区域
2.調整区域
3.非線引き区域
4. 都市計画区域外
農地法 第3条許可申請
農地法第3条は
「農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。」
とされています。
難しいですね。
転用行為を伴わない所有権移転(権利移転)
と覚えた方がわかりやすいですね。
農地を農地のまま(耕作目的で)売買する
という行為が主な目的です。
というパターンですね。
農地法 第4条許可申請
農地を農地以外のものにする者は、政令で定めるところにより、都道府県知事の許可(その者が同一の事業の目的に供するため4ヘクタールを超える農地を農地以外のものにする場合(農村地域工業等導入促進法(昭和46年法律第112号)その他の地域の開発又は整備に関する法律で政令で定めるもの(以下「地域整備法」という。)の定めるところに従つて農地を農地以外のものにする場合で政令で定める要件に該当するものを除く。第5項において同じ。)には、農林水産大臣の許可)を受けなければならない。
これも何の事だか・・・(>_<)
権利移転を伴わない転用行為
が、農地法第4条の申請になります。
要は、自分の所有する農地を、農地以外の物に転用する場合が、農地法第4条申請です。
自分の家を建てる為に、自分の畑を宅地に転用する
といった行為が農地法第4条許可申請or届出が必要な行為となります。
といった自己利用目的のパターンです。
農地法 第5条許可申請
農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第4項において同じ。)にするため、これらの土地について第3条第1項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が都道府県知事の許可(これらの権利を取得する者が同一の事業の目的に供するため4ヘクタールを超える農地又はその農地と併せて採草放牧地について権利を取得する場合(地域整備法の定めるところに従つてこれらの権利を取得する場合で政令で定める要件に該当するものを除く。第4項において同じ。)には、農林水産大臣の許可)を受けなければならない。
こちらも4条と内容的には同じ文言ですが・・・。
権利移転を伴う転用行為
が、農地法第5条の申請になります。
第3者が、第3者の家を建てる為に、農地所有者から農地を譲り受け(所有権移転)、宅地に転用する
といった行為が、農地法第5条許可申請or届出が必要な行為となります。
といった第3者へ売却するパターンですね。
※父親名義の農地に子供が家を建てる場合も5条申請になります。権利移転ではなく使用貸借ですね。
農地法第5条許可申請での売買の流れ
農地法第5条許可申請で売買を行う場合の大まかな流れです。
農地の売買を行うには
これまで見てきた条件をクリアする事(=第3種農地)で、農地も売買する事が可能です。
知っておくべき農地転用の基本
- 農地の種類
- 区域区分
- 農地転用の許可(届け出)
これらをクリアする事で、農地の売買は可能となります。
細かく言うと、農地転用の目的や内容についても、許可権者によって審査されますのでもう少し面倒ですが、大まかにはこれらの大前提がクリアできていれば、そこまで大きな問題は発生する事は少ないでしょう。
参考記事: