離婚と住宅ローンと売却。不動産屋に騙されるな!の巻

離婚と住宅ローンと売却について、現在相談を受けている案件を例に、考えて見たいと思います。

住宅ローンを残したまま離婚される場合は、具体例として参考にしてください。


離婚と住宅ローンと自宅の売却について


今回の相談の概要
  • 土地:奥様名義(奥様の両親から5年前に相続)
  • 建築時は両親の名義で農地であった。

  • 建物:ご主人名義

  • 住宅ローンはご主人の単独債務(奥様は物上担保提供者の状態)

  • 現在は1年ほど空家であり、ローンの支払いが重荷になってきたため売却

  • 2年前に協議離婚済みも、財産分与や細かい取り決めはしていない

  • ローン残高約1,500万円+経費約50万・・・ご主人の自己申告


  • 買主から1,230万円で購入申し込みがあったが、金銭の負担についての説明が一切ない状態で、住宅ローンの不足分の半額と1年間の支払い分の半額を奥様側に負担し、売買契約をするように要求されている

置かれている状況はこのような形でした。

奥様からの相談でしたが、間で動いている不動産業者が半ば滅茶苦茶で、大切な金銭の支払いについての奥様の同意がないまま売買契約を強行しようとしていた状況で、私に相談があったのです。

出来の悪い不動産業者の言い分


最初に言ってきたこと。
悪い不動産屋さん
夫婦の共有財産なので土地も建物も2分の1ずつで計算するのが一般的です。
買主の木が変わるといけないので、今日中に返事を下さい。

と、口頭でのみ連絡があり、せかされたとの事。

これをそのまま負担を表にしてみますと


売却代金
ローン追い金分
経費分
各支払い分
ご主人支払い分
6,150,000
1,350,000
250,000
7,750,000
奥さん支払い分
6,150,000
1,350,000
250,000
7,750,000

12,300,000
2,700,000
500,000
15,500,000

完全に半額を負担させようというお話でしたが、賢い方はもうお分かりですね。

そう、相続した土地部分は奥様の特有財産なのですから、全てを半額負担はおかしいですよね。

そこで

土地と建物の金額の割合を出してもらうようにお願いしてみてください。後、正確なローン残高が必要です。

と言い、対応を不動産屋さんにして貰ったところ、

悪い不動産屋さん
この辺りの農地の相場は坪1,000円位ですから、農地は30万円位ですね。
後は宅地への工事代金も含めて共有財産なので、2分の1が当たり前です。


と帰ってきて、またまた頭を悩ませてしまったそうです。

土地と建物の金額の割合と工事代金を出してもらうようにお願いしてみてください。

と言うアドバイスをしたところ、


悪い不動産屋さん
全部で必要な金額は1,550万円です。
工事代金は270万円でした。結局農地は30万なので残りの2分の1を負担して下さいね。


と帰ってきました。

頭悪いですよね?

聞いた事の答えが正確に返ってこない・・・もちろん奥様を介してのやり取りなので、正確に伝わっていないのかもしれませんが、一応書いたものを渡して要求していますので・・・

悪意さえ感じてしまいます。


で、この事を表にするとこうなります。



建物代(2分の1)
土地代(工事分)
土地代(相続分)
ローン追い金分
経費分
各支払い負担分
ご主人支払い分
4,650,000
1,350,000

1,350,000
250,000
7,750,000
奥さん支払い分
4,650,000
1,350,000
300,000
1,350,000
250,000
7,750,000

9,300,000
2,700,000
300,000
2,700,000
500,000
15,500,000

この表で計算すると、売却する事で奥様は

4,650,000円 + 1,350,000円 + 300,000円 = 6,300,000

の負担をしたことになり、145万円を追い金しないといけなくなります。


また、この段階で、まだ正確なローン残高は示されず、土地・建物の割合も口頭で表の様に言われただけです。


おかしいですよね?

ちなみに1年前にかなり近隣でほぼ同じ状況の農地を坪3万円で売買してるので、少なくとも相続部分は330万円程度はあると思いますし、建物の査定をしてみても・・・
路線価や基準値からも・・・
不動産屋は嘘をつく・・・

で、査定は幅がある物なので 3パターンを提示しましたが、ここでは中間地点の物を表で提示させて頂きます。




建物代(2分の1)
土地代(工事分)
土地代(相続分)
ローン追い金分
経費分
各支払い負担分
ご主人支払い分
3,075,000
1,350,000

1,350,000
250,000
7,750,000
奥さん支払い分
3,075,000
1,350,000
3,450,000
1,350,000
250,000
7,750,000

9,300,000
2,700,000
3,450,000
2,700,000
500,000
15,500,000

必要総額はそれぞれ  1,550万円 ÷ 2 =7,750,000円とすると、

奥様は土地・建物を売却する事で

相続財産で345万円

土地(工事費用)・建物で4,425,000円

合計 7,875,000円

支払った事となり、105,000円余分に負担する事になります。返してもらう必要すらあります。

建物割合が大きい場合でも400,000円程の差なので、不動産業者が求めてきた金額とはかけ離れていますね。


この事を話すと・・・


悪い不動産屋さん
ここからさらに、1年間支払った住宅ローンの半額をご主人に払わないといけないんですよ!


と言ったことを言ってこられたそうで、空家になった場合のローンの支払いの取り決めを行っていなかったので、確かに言われる部分はありますが・・・

そもそも夫婦の共有財産と言い出したのは夫側で・・・。

それを差し引いても半分以上の負担をしているので、やはりこの不動産屋の言っている事には無理があります。


加えて、私がローンの残債について計算してみたところ・・・もちろん誤差はありますが、1,400万円位になるのです。

ローン残額について正確な物を再三要求したにも関わらず、出してこなかった経緯を考えると・・・



残債1400万の場合
建物代(2分の1)
土地代(工事分)
土地代(相続分)
ローン追い金分
経費分
各支払い負担分
ご主人支払い分
3,075,000
1,350,000

850,000
250,000
7,250,000
奥さん支払い分
3,075,000
1,350,000
3,450,000
850,000
250,000
7,250,000

6,150,000
2,700,000
3,450,000
1,700,000
500,000
14,500,000

奥さん支払い分合計 7,875,000円

となる為、625,000円をご主人から奥様へ支払う形がベースの話し合いである所が・・・・




残債1400万の場合
建物代(2分の1)
土地代(工事分)
土地代(相続分)
ローン追い金・経費分
各支払い負担分
必要追い金
ご主人支払い分
4,650,000
1,350,000

1,100,000
7,250,000
1,250,000
奥さん支払い分
4,650,000
1,350,000
300,000
1,100,000
7,250,000
950,000

9,300,000
2,700,000
300,000
2,200,000
14,500,000


奥さん支払い分合計 6,300,000円 追い金:950,000円

ご主人支払い分合計 6,000,000円 追い金:1,450,000円

と言うのが根本的な所にあり、奥様に145万円の追い金を負担させることで、自分の負担を減らそうとする意図が見えてしまいますね。



少しわかりにくい話でしたが、要は土地・建物の価格割合や、ローンの残高によってお互いの負担金額が大きく変わってくるのです。

そこを悪意を以て押し切ろうとする、悪意を感じるやり口をこの不動産業者は行っているのです。

まとめると




持ってきた話
ハメ込もうとした形
本来の形
奥さん土地建物
6,000,000
6,000,000
4,425,000
奥さん土地
300,000
300,000
3,450,000
奥さん追い金
1,450,000
1,450,000
-625,000

7,750,000
7,750,000
7,250,000



ご主人土地建物
6,000,000
6,000,000
4,425,000
ご主人追い金
1,750,000
750,000
2,825,000

7,750,000
6,750,000
7,250,000



支払い 計
15,500,000
14,500,000
14,500,000

205万程ご主人が得する形を取ろうとしていたことになります。


この件については、現在進行形なので、改めて加筆しようと思います。

離婚に伴い住宅ローンと自宅の売却をする際は

離婚時にきちんと財産分与や、住宅ローンの扱いについて取り決めを行っておくのが今回のケースからもわかります。

関わってくる人間の質やモラルによって大きく事が変わってきます。

確かに、農地が坪1000円だから30万円という図式は、100%間違いではありません。

今回の物件ではあり得ないですが、近隣の農地であればそういう事例もあるかもしれません。

だからと言って、無理矢理それを一方に押し付けるのは絶対ダメでしょう。

あくまで民法等の法律に基づいて、中立なアドバイスをするのが正しいと思います。

ましてや、私の様な行政書士や司法書士、弁護士などの資格者ではなく、単なる不動産屋さんが言う事ではないはずです。

そもそも不動産屋は不動産を売るのが仕事なので、取り合えず押し切ろうとする傾向があります。

相談すべきところを間違っている部分があるのです。

財産分与の相談は行政書士や税理士、弁護士の領分です。

そこまでは必要ないと感じても、最低限の話し合いと取り決めは必要なので、皆様も必ず相談する事を考えましょう。

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宅地建物取引士・行政書士です。 農地の売買、農地転用、任意売却、離婚相談、相続相談をメインに実務を毎日こなしています。 困った時はぜひご相談を!