取引物件の説明不備が原因とされる紛争
新築戸建住宅の買主が、駐車場への自家用車の出し入れが極めて困難なことを理由に契約の自紙解約を売主業者に要求し、解決金の支払いで秘解した事例
※宅建業法第35条第1項第5号(未完成物件に関する説明義務)に関する紛争事例です。
紛争の内容
購入金額と売却予定金額との差額
契約・引渡し等の諸費用
その他精神的損害
- 買主Aは、媒介業者Bの媒介により、売主宅建業者Cから新築戸建住宅を購入し、引渡しを受けた翌日、駐車スペース(以下、「駐車場」という。)に自家用車を出し入れしようとしたが、面している道路が狭いため入れるのが極めて困難であることが分かった。
- Aは、契約前に、前面道路が2項道路で幅員が2.9メートルしかなく、「図面上では出し入れが困難に思えるが大丈夫か?」とBおよびCの各担当者に口頭で質問しており、「大丈夫」という返事を得ていた。
- AがCの担当者の立会いを求めたところ、同担当者は出し入れの困難さを認め、花壇の一部を削除して駐車場入り口を若干広げる工事を行った。
- Aは、当該工事により出し入れの困難さはある程度改善はされたがいまだ十分ではないことから、駐車場が確保できなければ本物件を購入した目的を達することができないとして、Cに契約の白紙解約を申し入れることとなった。
- Aは、Cが白紙解約に応じないため、Bに本物件の売却を依頼したうえ、Cに対して、以下の損害賠償請求を行い紛争となった。
各当事者の言い分
買主Aの言い分駐車場への出し入れについて図面上で困難に思えたので、BおよびCの各担当者に何回も質問をしたが、大丈夫という回答であった。
実際の出し入れについては、何回も切り返しをしないと入らないし、隅切りをして改善するということだが、抜本的な解決にはならない。
駐車場が確保できなければ本物件を購入した目的を達することができないので、白紙解約をしたい。白紙解約できなければ売却を考えているので、その場合の損害賠償を要求する。
売主宅建業者Cの言い分前面道路幅員、駐車場の大きさについては、契約前に説明済であり、その後に説明内容が変化したわけではない。
出し入れが多少困難とはいえ、Aの使用中の車は駐車場内に納まっている。
大型車に買い換えた場合、入れられない可能性があるとのことだが、契約から引渡しに至るまでそのことを前提にした話は出ていなかった
要求を受け、さらに出し入れしやすくするため隅切りをする提案もしており、いずれにしても、契約解除や金銭解決には応じられない。
本事例の問題点
Aの度重なる質問にもかかわらず、BおよびCの各担当者は、現地の前面道路幅員や駐車場の大きさと建物配置計画資料等から「出し入れが円滑にできるか」正確な調査をせずに「大丈夫」という回答を行い、引渡しまで進めてしまった。本事例の結末
Cは、終始、契約解除や金銭解決には応じられないという態度であったが、提案している隅切りを実施した場合の工事費用が約29万円であること、また、Aも当該住宅を転売に掛けており、成約が見込める可能性があることから30万円近い費用を掛けて改良するより当該金額を受け取ってその金額を値引き金に充当するほうが早期解決を図れるとの考えもあり、契約解除はしない代わりに、CがAに解決金30万円を支払うことで和解した。本事例に学ぶこと
最近の住宅の売買において、駐車場スペースや車庫の有無は買主の関心の高い項目のひとつである。本事例においては、買主は出し入れが困難と思えるとたびたび質問しているわけであり、売主の担当者および媒介業者は、前面道路幅員と駐車場の大きさから円滑に出し入れできるのかどうか正確な調査・確認を行い説明するべきであった。
前面道路幅員が狭い場合や車種によっては間口・奥行が不十分なため、出し入れの困難さに加えて車の一部が道路にはみ出したり、門扉が閉じられないなどの問題が発生し思わぬトラブルになることがある。
宅地建物取引に係わる者は、調査・確認をしないで不用意な回答は厳に慎むことが必要である。
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